皆さま、こんにちは。東京都中央区新富の榎本歯科医院、矯正治療を担当しております榎本泉です。
梅雨の季節を迎え、モワッとする湿気と暑さでマスクが少し苦しく感じる今日この頃ですが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。
前回は、前歯にブラケット装置を付けて治療を行ったお子さんの例をご紹介しました。今回は歯と骨格的なずれの両方に問題を抱えた例をご紹介します。
症例2)初診時年齢7歳2か月の女の子。
<治療前> 主訴は「学校の歯科健診で歯並びを指摘された」ということでした。
お口の中は乳歯と永久歯が混在している混合歯列期です。萌出途中の左上前歯はすでにかみ合わせが深く、このままですと下の前歯が完全に隠れてしまうような状態でした。さらに下の前歯は上の前歯の裏側の歯茎に当たっており、歯茎には下の前歯による圧痕を認め傷ができていました。その他、歯の本数など異常は認められませんでした。骨格的には下あごの前方発育がやや弱く、横顔の写真からも下あごがやや後退しているように見えます。通常通り、検査を行い後日ご両親を含めて今後の矯正治療についてご相談しました。
その結果、下あごの前方成長を促し、上下前歯のかみ合わせを浅くすることを目的として、まず初めに取り外しのできる装置を使っていただき、その後前歯の並びを整えるためにブラケット装置を付けることとしました。なお、お顔がとても小さいお子さんでかつ1本1本の歯のサイズが大きいことから、今、矯正治療を開始したとしても、将来的には歯が綺麗に並びきらず、場合によっては歯を何本か抜いて並べる可能性についても説明いたしました。
<治療経過>
まず初めに、下あごの前方成長を促しかつかみ合わせを浅くする目的で、就寝時、取り外しのできる装置を使って頂くことにしました。今回はフレンケル装置という矯正装置を用いました。この装置は少なくても毎日8時間以上使用して頂かないと効果が出にくい装置です。また、一生懸命に使ったとしても残念ながら良い反応を示さない場合もあります。このお子さんはすぐにこの装置に慣れてくれて、毎晩の就寝時はもちろんのこと、学校から帰ってから、あるいはお休みの日で家にいる時はなるべく長い時間装置を使って頂くなど自ら積極的に取り組ん下さいました。約1年間、この装置を使っていただき、その後、前歯のみブラケット装置をつけて並べました。
<治療後>
着脱可能なフレンケル装置を約1年間、ブラケット装置による歯の移動を約8か月間行い、当初の目標に到達したので装置を外しました。その後、保定装置を使っていただき現在は永久歯列への歯の交換を定期的に観察しております。
治療前後の横顔写真を比べますと、つんと前に出ていた唇は無理せずに閉じれるようになりました。これは下あごの成長を促してあげることによって、上あごと下あごの土台のずれが小さくなったためと考えられます。また、かみ合わせも浅くなり、下の前歯で上の歯茎を傷つけることもなくなりました。
小児期に矯正を行わずに大人になってから矯正治療を開始することも、もちろん可能です。しかしこのお子さんのように、小児期から矯正治療を開始することで今よりも状態を悪い方向に進ませないことができます。あるいは、永久歯列期での治療が複雑になることを回避することができます。たとえ、永久歯を何本か抜くような結果になったとしても、、、。
小児期から矯正治療を開始する場合、ダラダラと装置を使い続けることはお子さんにとっても負担になりますし、虫歯のリスクも高まります。当院では、お子さんとも相談しながら飽きてしまわないようにめりはりの効いた治療を心がけております。
矯正治療開始の時期や、そもそも開始した方が良いのかはお子さんの歯並びによって異なります。周りのお子さんが矯正治療を始められると、何となく不安になられる親御さんもいらっしゃるかと思いますが、そのような時にはぜひ一度、矯正専門の先生にご相談くださいませ。