皆さま、こんにちは。東京都中央区新富の榎本歯科医院、矯正治療を担当しております榎本泉です。
新型コロナウィルス感染症に罹患された方の一日も早い快復をお祈りすると共に、コロナウィルスと日々戦っていらっしゃる医療従事者の方に心より感謝いたします。
皆さまの生活も大きく変化し戸惑われていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。私たちが日常生活の中でできる予防として3密を避けること、咳エチケット、手洗いをこれからも心がけていきたいと思います。今後はウィルスと共存していくという新しい生活スタイルを模索していくことが必要と感じております。
さて、今回から数回にわたり小児矯正治療の症例をご紹介したいと思います。
症例1)初診時年齢8歳5か月の女の子。
<治療前> 主訴は「上の前歯の並びが気になる」ということでした。
ご覧のとおり、上の前歯は前後に大きくずれて生えており、一部、下の前歯とかみ合わせが逆になっていました。検査を行った結果、骨格的な問題(上顎前突、下顎前突、非対称など)は認められず、歯の位置異常のみであることが分かりました。お子さんとご両親と相談の結果、ブラケットを部分的につけて歯を並べていくこととしました。
<治療経過> 上の前歯(永久歯)4本と奥歯2本(乳歯)にブラケット装置を付けました。矯正治療中は約1か月に1回来院して頂き、ワイヤーを交換することで徐々に歯を並べていきました。ワイヤーを交換した当日は、少し歯が浮くような感じがあったとのことですが、それも1日ほどで慣れていったようです。ワイヤーが入ると歯ブラシも少しコツが必要ですが、このお子さんは歯ブラシをとてもよく頑張ってくれて、また来院時にクリーニングを行うことで矯正治療中に新たな虫歯を作ることなく順調に治療が進められました。
<治療後> 治療開始約1年後、上の前歯が予定通りに並んだのでブラケット装置を外しました。
治療前後の変化を見てみますと、主訴であった上の前歯はもちろん綺麗に並びました。その他の変化として注目すべきは、今回装置をつけていない下の前歯も重なりが少なくなっていることです。これは奥に引っ込んでいた上の前歯を正しい位置に並べたことにより、下の前歯が本来あるべき位置に自然と並んできたものと考えられます。このように、お口の中の環境を整えると付随して良好な結果が得られることもあります。
ブラケットを外した後は、歯の後戻りを防ぐために取り外しの保定装置(リテーナー)を就寝時に毎晩使って頂きました。3~4か月に1回来院して頂き、リテーナーの使用状況、歯ブラシのチェック、永久歯の交換を観察していきました。目安としては犬歯が生えてくるまでは、リテーナーを使って頂くようお願いしました。
第二大臼歯まですべての永久歯が生え揃った後の歯並びはごくわずかな歯のずれこそありましたが、満足されていらっしゃったので小児矯正のみで矯正治療は終了となりました。引き続き、定期健診にはお越しいただいております。
改めて初診時の写真を振り返りますと、もしも小児期に矯正治療を行わずに大人になっているとすると恐らく歯のでこぼこはさらに大きくなり、永久歯列から開始する矯正治療ではもしかしたら抜歯を行い歯が並ぶすき間を作ってあげないと歯が綺麗に並びきらなかったかもしれません。そのことを考えると、このお子さんは小児期の段階で矯正治療を開始できたので、その後の良好な口腔内の成長発育を誘導できたものと思われます。